キャスト
市川雷蔵
若尾文子
中村玉緒ほか

ジャケ写だけ見たらお色気映画みたいですが、
ぜんぜんマイルド。
好色と助平は違います。
軽くて後味さわやかなコメディです。

放蕩息子の世之介が、日本中津々浦々、
さまざまな女子と仲睦まじくなるのですが、
そのスピード感たるや。
「日本中のおなごを幸せにしたい」
「おなごの喜ぶ顔が見たい」

というつきぬけた信念があり、すがすがしいです。
世之介は、人妻、妾、遊女など、
どんな境遇のおなごとも躊躇なく関係をもってしまうのですが
「ゴツいオネエの遊女」だけは蹴っ飛ばして逃げました。

夜鷹が婆さんだったときは
「お母ちゃんを思い出す」とお金を払って
堪忍してもらいました。

夜道で女性が客引きして、
ゴザ敷いてその場でことを済ませる営業形態ですが、
最近のドラマではそういう描写はないですね。

「幸せではないおなごの姿」を、
多数取り上げている貴重な資料映画ともいえるでしょう。

人の妾さんの中村玉緒を連れて旅に出ますが、
そこで初めて「幸せ」を満喫する玉緒...。
喜んだのも束の間、突然悪党にさらわれる。

玉緒の行方がわからず、心配する世之介。

夜道で出会った墓荒らしから、
墓に埋められているのは玉緒と知ります。

さらわれて、不憫にも首をくくって死ぬという、
なんとも気の毒な役。
気の毒な最後ですが、途中で消えたまま放置されず、
ちゃんと墓に入れられてるのも、
女性への敬意が感じられました。

墓に手を合わせてしんみりしますが
「あの世で一緒になれるとも限らんしな」
と、サッと気持ちを切り替える世之介。
超あっさり〜〜!

イケメンは努力をせずとも人に愛され、
人を傷つけても許される、というのは間違いで、
運悪く命を落とす人もいたけれど、
心を尽くして手を合わせ、
最後まで望みを叶えてやろうとしている。

「日本中のおなごを喜ばせる」
というアホなスローガンを掲げているだけはある。

まあ、人を楽しませることには天下一品だけど、
下手に付き合ったら寿命が縮まりそう。