あらすじ

滝川夫婦と若い幸田の3人が登山へ出かける。登山中に滑落し、妻の滝川彩子と夫がザイルで宙吊りになってしまう。彩子はザイルを切って夫を死に追いやった。彩子は幸田に好意を寄せていた。彩子がザイルを切ったのは故意か、締め付けが苦しかったからか。
妻は告白する
1961年(昭和36年)公開の映画です。 当時は、逆毛を立ててボリュームを出して、トップから髪の毛をかぶせてまとめるヘアスタイルが流行していました。 若尾文子さんも大変お似合いでしたが、険しい山と、あややのボリュームヘアが、ミスマッチすぎて序盤で吹いた。 帽子かぶれないし、風ふいたら乱れるでしょ...。

女性は生活のために結婚する時代

11歳の時に戦災孤児になったあやこは、親戚にひきとられました。
親戚の家は楽ではなかったが、薬剤師になるため大学の薬学科へ進学。
奨学金が少なく、助教授の雑用をして生活していました。
過労と栄養失調でフラフラしていたら、助教授に体の関係を迫られ、そのまま結婚。
親子ほど年の離れた助教授、えらそうだし、優しさのかけらもありませんね。
しかし設定に違和感もあります。
昭和30年代、女性を大学進学させる家庭は珍しかったのでは。
「女に学問は不要」と言われ、生活のために結婚する人が多い時代でした。
あややは成績優秀だったと思われますが、ラストのクソ女っぷり。

昭和30年代の金銭感覚

あややに子供ができたときの教授のセリフ。
教授「4万円そこそこの貧乏所帯で子供を育てるのは無理」

薬学部の大学助教授の給料が4万円!
製薬会社からの仕事を請け負って3万円!

製薬会社の幸田が、登山好きの教授に、
「奥さんのために生命保険に入っては」と、
100万円の生命保険(掛け金毎月5,000円)の契約を勧める。

あややは、裁判で「500万円の保険金目当てに夫を殺したのでは」と追求されるが、実は教授本人が生命保険の金額を500万円(掛け金毎月3万円)上乗せした。

教授は健康で山の知識も十分あり、そう簡単に死なないという自負があった。

それにしても月収7万円に対して、保険金3万円、たっかぁぁぁい!
この時代の月収4万円は高い方だと思ったけど、50歳の助教授にとっては、子供を育てる余裕がないほど薄給だった?
大学生あややが生活苦のために結婚した助教授、貧乏なのかドケチなのか?

製薬会社の幸田、優しくてクソ真面目

夫殺しの妻として、世間に冷たい目で見られているあややに幸田だけは優しい。
あややは幸田に依存していくようになる。

あややが色っぽいから教授にも言い寄られたし、幸田もあややを放ってはおけなくなっている。
「妖艶すぎて男を狂わす女」という描写に見える。

ザイルを切られ谷に落とされる夫も、振り回される幸田も、悪いのはあややなのか?

判決で無罪になると、夫の保険金500万円でアパートを借り、新しい家具を揃え、幸田と暮らそうとする。
人が死んでるのに無邪気だな。

が、ここであやや大誤算。
幸田はクソ真面目なので「教授に顔向けできない」とドン引きして逃げる。
幸田役は川口浩です。
あの、ピラニアに食われかかっていた川口浩探検隊です。

典型的な自我がない女性

ここまでの流れで、あややは自分の意思で人生を選択していないんです。
生活苦で結婚して、子供ができたら堕ろせと言われ、離婚には承諾してもらえず、山に登ったら滑落したので絡まったロープを切った。
明確な殺意があったわけではなく、偶然にまかせています。
教授みたいな自分勝手でケチな男と結婚する点を見ても、あややは計算高くない。

あやや、メンヘラ化する

幸田に別れをつげられた後のあやや。

「週に1度でいいから会ってください」
「月に1度でいいから」
「1年に1度...」
「2年に1度...」

しつこすぎて幸田ドン引き。

携帯がない時代なので、幸田の職場に突然行く。
幸田が居留守を使おうとしたら、傘もささずにズブ濡れで立っている。
もう怖いって〜〜!

泥沼劇なのに悪人はいない

幸田には婚約者の理恵(馬渕晴子)がいるんだけど「抱きとめてあげなさいよ」と幸田をけしかけたりして、あんたどっちの味方なの?

幸田の心が戻らないことを知って、あややは薬学生時代に盗んだ青酸カリを飲んで、幸田の職場で息絶える。

幸田は、婚約者がいながら人妻にかまったりするから、悲劇がおきたんだな。
奥さんを狙っていたわけではなく、純粋な善意で。

サスペンスなんだけど悪人が一人も出てこないんですね。
全員「自分が正しい」と思っているだけで、誰かを傷つける気は微塵もない。

あややが一人で傷ついておかしくなっていくのだけど。
あややの妖艶さはわかったけど、キャラクターの魅力は今ひとつだなあ。
妖艶とメンヘラは紙一重、どちらかというと心理ホラーなラストでした。

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