勝新太郎の座頭市に「すげえ!」と興奮していたのですが

座頭市はリメイクもいくつか作られています。


最近だと綾瀬はるかの「ICHI」。

勝新は敵味方関係なく「ドメクラ」言われてましたが、

差別用語として今はそういう言葉が使えないので、

綾瀬市は「私は目が見えないからね...」とボソボソ語ります。

声量ちっさ!

勝新版は、差別用語こそあれ薄幸感0で爽快です。


さて、ICHIの感想です。

見所は、

ヤクザの2代目、窪塚洋介VS悪党軍団の万鬼党。


まず、最初に出てくる悪党がダメ。

時代劇の大悪党でも、

よほどのことがない限り、庶民には手出ししない。

盲目の夜鷹に金を払わず、

男どもが女一人に蹴りをいれたりしない。

冒頭の佐田真由美の雑な扱いよ。

芝居見物する無抵抗の一般人を

無意味に斬りつけるのもいただけない。

 

中村獅童の着物が派手すぎて笑ってたら、

顔芸がこわいを通り越して面白くなってきた。

 

通りすがりの大沢たかおが弱すぎるくせに、

なにかと市を助けようとして、ただの足手まとい。

なのに、最後だけいきなり強くなるのズルイんじゃないか。

細身の女性である市が、

男性相手に互角に戦っているが、

殺陣の動きが綺麗で違和感がない。


そりゃ、勝新と比べたら全然ですけど、

彼女の優れた運動神経でうまく殺陣をこなしている。

アクションできない俳優だと、

引きの撮影はなく、暗闇か顔アップで誤魔化します。


2018年放送のNHK大河ファンタジー

「精霊の守り人」

父に特訓を受けた短槍使いの女用心棒と設定がカブりますね。

「精霊の守り人」が時代劇オマージュなのか?


綾瀬市、顔は綺麗なのに着物がボロボロすぎる。

勝新の座頭市、意外にも着物はきれいなんですよ。

旅先であんまをして小銭を稼いだり、

世話になった人に挨拶に行ったら

ご飯食べさせてもらったり、

新しい浴衣を仕立ててもらったり。


股旅映画の主人公は各地で人と関わっていくのが基本だった。

一人旅する人は、

人と関わるのを避けちゃ、すぐ死んじまうから。

 

綾瀬市みたいに心を閉ざした無口な旅芸人が、

病気にもならず、お尋ね者にもならず、

生きているのはちょっと都合が良すぎる。


母のいない少年が「ねえちゃん、ねえちゃん」と懐いてきて、

めんどくさそうにしていた市が、

少しずつ心を開いていく感じは良かった。


あとね、窪塚洋介。

これがなかなか威勢のいい兄ちゃん風でうまかった。

「沈黙」の隠れキリシタン「踏み絵のプロ」をやっただけある。

2000年頃、泣く子も黙るイケメン俳優といえばコイツだった。

マンションの9Fから転落して生き延びた強運の男だ。

もっといろんな作品に出てほしい。


ICHIは、殺陣シーンと、後半の悲哀に満ちたストーリーは

見て損はない作品だ。

勝新の座頭市とくらべちゃいけないけど、

若干チープだったかな。