女の勲章

あらすじ

服飾デザイナー、大庭式子(京マチ子)が3人の女弟子達と、銀四郎(田宮二郎)との中で、女の生き方を描く。

おもしろ帽子のオンパレード

1961年(昭和36年)公開の作品です。
のっけから不思議帽子と個性的な衣装がたくさん出てきます。
京マチ子のファッションが一番イケてる。
デザイナーが新しい服飾学校を立ち上げ、
チェーンスクールを次から次に増やし、
外注の工場に縫製を委託していたのをやめて
自社工場を作り、
お嬢様デザイナーが実業家として成長していきます。

モテすぎる田宮二郎

銀四郎(田宮二郎)は4人の女性に次々と手を出すんだけど、
女性の出世欲をくすぐり(?)
新校の責任者に配置して、事業を成功させます。
ただのタラシじゃなくて実業家としても手腕を振るいます。

彼女達は田宮二郎に対して、
ただハンサムだからワーイワーイと浮かれてばかりではなく
それぞれの目的が微妙に異なるのが秀逸。

京マチ子(事業のアドバイザーとしても信頼し、愛している)
若尾文子(恋人がいるけど利用している)
叶順子(普通に愛している)
中村玉緒(工場の権利書の名義のため1回きりの関係)

毎日仕事で顔を合わせる間柄での四股ってキツくない?

とにかくセリフが長くて早口

関西弁での長セリフが多くて、早口なので短い時間でも内容が濃いです。
ボーッとみていると聞き逃します。
昨今の、リアリティのないお仕事ドラマとは比べものにならない情報量。
必ず取材をしてから小説に取り掛かる山崎豊子の作品は、60年経た今でも十分見応えがあります。
チャラさ全開の田宮二郎も大阪弁のおかげで、キザさが半減して、なんだか憎めない感じに仕上がっています。
建築現場の資材の値段や、ファッションショーにおける織物会社からの協賛金とか、当時の金銭感覚の資料としても興味深いです。

Kindleで「女の勲章」が安くなってます。

明るいダークサイド玉緒

ほとんど全員関西弁なんだけど、中村玉緒の言葉が古臭いのが気になりました。
「おちょやん」か「あさがきた」のよう。
明治〜大正あたり?
彼女が他に出演した映画もそうですが、セリフに力が入りすぎて見ているこちらが疲れます。
他の女性が簡単に田宮二郎にひっかかるのに、玉緒は、他の女性と三股かけてるのを知っていて脅迫してきます。
弱みを握り、工場の名義を自分の名前にしてもらうことを約束させたら
「さっ、寝ましょ」
事務的ーー!

狡猾な感じではなく(演技の下手さか?)、
無邪気にユスってくるのが逆に怖いです。

女性同士が四股かけられていることに気づかない

女性達が仕事第一なので、恋愛面でのドロドロはあまりないです。
恋愛ドラマではありません
若尾文子はしたたかに男を利用する役がハマりますな。

仕事の手柄をとるために、
元恋人(織物会社勤務)に芝居させたり
ふつーにヒドイ。
結局失敗に終わるけど。

田宮二郎を家に連れ込んだ時は、自らタバコを買いに行くが、
元恋人が邪魔になると、自分のタバコを買いに行かせ、
その間にタクシーで逃亡。
放置プレイうける!

京マチ子、一途な女だった

京マチ子、四股かけられていることにとうとう気づきます。
お嬢様育ちだった京マチ子が
「あの子達と別れてよ!」とならず、
突然別れを切り出すのが潔いです。
女々しくない。

そして、新しい恋人ができて結婚を決意する京マチ子。
「学校も土地も全部渡すから今までの関係を清算したい」
と持ちかけます。ところが
「担保になってるからいらない」と拒否られます。
恋人には
「事業目的でも、銀四郎とのつながりが切れないなら、
君とは生活できない」
とフラれます。
教え子には裏切られ、結婚もうまくいかず、
とうとう気がふれて裁ちばさみで...。

田宮二郎、顔面力を最大に生かす

四股がバレ、京マチ子が亡くなっても、まったく罪の意識がなく、
平然としています。
どこまでもスマートな「金の亡者」。
端正な顔のせいで、さほど極悪に見えません。
人間らしさが感じられない、
不思議なキャラクターです。

事件が多すぎるのに猛スピードで終わる

四股、仕入れ金額のごまかし、両天秤、契約書偽造。
全員が裏でいろいろ画策していますが、
猛スピードで淡々と物語がすすんでいきます。
ラストは、あの4人がどうなったのか全くわかりません。
ハッピーエンドは無理だとしても、終わり方が唐突。
大映映画にありがちですけど。

結局、タイトルの「女の勲章」とはなにか?
仕事で成功することなのか、
3番目の女であることを許さないプライドなのか、
いろいろな意味が考えられます。
サスペンスが好きな方には物足りないですが、
昭和レトロなインテリアの雰囲気も良く、
古いのに逆に新鮮な感じがします。
そしてなにより脚本が丁寧で、濃い内容の映画でした。

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