黒い司法

あらすじ

司法取引で囚人が嘘の証言をして、証拠もないのに一人の黒人が有罪になった。
黒人差別による冤罪事件を、新人の黒人弁護士が、証拠集めをして判決を正していく物語。

嘘の証言をしたのは白人の囚人だが、
念入りに調べていくと
「無実の人間をハメるなんてごめんだ!」と言っており、
差別主義者ではなかった。
その証言を記録したテープが発見されたことにより、
事件は急展開する。

証言した白人囚人は、子供の頃に火事にあったトラウマで精神を病んでいた。
死刑執行室(電気椅子)の近くの独房が怖くてたまらず、
「ここから出られるなら、なんでも言う」
と、嘘をついたのだった。
心に傷を負った人間が引き起こした、悲しい冤罪事件。

差別で一人の無実の人間を追い込んでいくのは、
証言者である白人だけではなく、
大勢の民衆だ。
民衆の安全のため、という大義名分で
犯人を作り上げ、警察の威信を保つ。

差別的な若い白人の看守が、
時々バツの悪そうな顔をしていたのも気になる。
周りがやるから俺も差別しとくか、
みたいな人もいるかもしれない。

囚人仲間の「ハーブ」は戦争で人を殺したことになっていたが
「あの子が地雷を拾うなんて!」と悔いていたので、
殺意がなかったことがわかる。
ポツポツと語る言葉で、
黒人に過剰な判決がされていることを知る。

ハーブが死刑執行されるとき、ほかの囚人仲間が
「いつも一緒だ」と
金属の食器をカンカン打ち鳴らすシーンは、涙を誘った。
髪の毛を剃られ、電気椅子に座り手足を固定されるシーンは
あの有名な「グリーンマイル」で見たが、
何度見ても嫌なものだ。

嘘をついた白人証言者は、証言を撤回したらまた独房行きなので、
最初は拒んでいたが、2度目の証言台では「犯人は見てない」と告白した。
彼は黒人を救いたいという気持ちより、
警察に対する反抗心から、そう言ったように見えた。
それでいい。
いきなり善人にならなくていい。

実話をベースにしているが、最後のテロップも衝撃的だった。
囚人仲間の若いレイは殺人罪で30年収監されて、証拠不十分で釈放された。
冤罪で死刑になった人は不幸だが、
30年もの長い年月を刑務所で過ごした人もいる。

現在も、白人警官による「黒人殺害・暴行」が繰り返されている。
人種差別になじみのない日本だが、関心を持つべきニュースだ。

世界は差別のない社会を目指していても、
まだまだ現在進行形で事件は起こっている。