幼い依頼人
暴力によるPTSD症状を患う人は観てはいけない、というレビューがありますが、逆に被害を受けている人を救えるかもしれないので、多くの大人に観て欲しいです。
ロースクールを卒業して就職に失敗したジョンヨプは、とりあえず児童福祉館に就職する。ある日、継母から虐待を受けている“ダビン”姉弟に出会う。ジョンヨプは数日後、法律事務所に就職するが、ダビンが大怪我をしたという連絡を受ける。
怒らないのが逆に怖すぎる
日本での児童虐待のニュースでは、人相の悪い茶髪の母親や、散らかった玄関の映像などで、すさんだ家庭の様子を強調するし、フィクションのドラマだとヒステリックな母親が出てきますね。
本作の継母(ユソン)は、ロングヘアをゆるく巻いて上品な服を着て、部屋を綺麗に片付け、食事の用意をしていますが、子供達がおかずをこぼすと、ひとたび不機嫌になります。
継母は、おもむろに黒いゴムで髪を結び、冷たい目で睨みつけます。
子供たちが怯えだし、それが虐待の始まりです。
「韓国映画のお母さんはだいたい絶叫系」ですが、ここで下品な芝居をしていないのが逆に怖さ倍増。
意外にも父母の力関係は同じ
子供のいないところで夫婦が愚痴っているシーン。母「ガキはきらい」
父「子供がいると役所から金がもらえる。子供の面倒を見ろ。」
父親は育児に無関心で、いい気なもんだ。
意外だったのは父と母の力関係で、夫婦喧嘩もなく、仲は良さそう。
父親が子供達に手をあげるシーンは一度もなかったです。
やはり実子だからでしょうか。
妻に先立たれて、男手一人で2人の子供を育てていたが再婚した相手がとんでもない女だった。
お父さんの人物描写が雑。空気すぎる。
君は間違っていないよ
10才の姉は、継母に首を絞められて、警察に通報して児童福祉館にまわされます。自分で通報するってどんだけ賢い子なの!
「わたし、間違ってますか?」
と大人に問い詰め、弁護士になりそこなったジョンヨプは「間違っていない」と答えます。
職員が形式だけの家庭訪問をし、虐待を受けた子は家に帰され、お役所仕事ってどこもこんな感じなのかなあ、と残念な気持ちになります。
この姉弟は、母親といないときは表情が明るく、それがとても可愛くて救われます。
演技も自然だし、韓国の子役おそるべし。
その後もジョンヨプに懐いて、児童福祉館を訪れるようになります。
子供達を放っておけないので、ゴリラのぬいぐるみやハンバーガーを与えます。
その後、ジョンヨプはソウルの弁護士事務所へ就職が決まって、この子達にもう会えないだろうと思い、
「これでハンバーガー買いなさい」
と5万ウォン札(日本円で約5000円)を渡します。
これが後で大問題になります。
母親の正体
後半、母親は詐欺をはたらいて服役したこともあり、間欠爆発症(怒りを抑えられない病気)という情報も出てきました。黙っていたらキレイな奥様なのに、人って見た目では、わからないですね。
母もまた、母の愛情を知らずに育ったことを裁判で暴露します。
負の連鎖。
同級生
姉のダビンの同級生のポッチャリ少年、最初見たときはジャイアン的なガキ大将かと思いましたが、めちゃくちゃいい子でした。重要証拠が捨てられて、ゴミ処理場まで探しに行くのは、韓国ドラマあるあるです。
結局見つからないんだけど、ポッチャリ少年がイイ仕事してました。
大人を信じたらどうなるか
弁護士のジョンヨプ達とポッチャリ少年の絶妙なチームプレーで、虐待されているダビンを救い出します。近隣住民は、子供達の泣き声を聞いても「またか」とスルー。
担任教師は、首にあざを作っているダビンの話を聞きませんでした。
集合住宅で、大勢が事件を知っていながら、見て見ぬ振りをするのは「目撃者」でもありました。
韓国人の国民性なのか、あの映画も怖かったです。
日本も似たようなものかもしれませんね。
部屋で泣きながら「大人を信じても誰も助けてくれない」と、ゴリラのぬいぐるみに話しかけていたダビン。
弟を失い、すっかり心を閉ざしてしまったダビンが、裁判で勇気を出すきっかけになったのは、ゴリラのぬいぐるみでした。
問題提起
映画なので奇跡的に証拠が出てきたが、亡くなった弟は本当に可哀想でした。 実際は証拠不十分で泣き寝入りしているケースのほうが多いだろうし、命が助かっても、被虐待児のメンタルをケアできる機関がどれほどあるのか、という懸念は残ります。
転んで怪我をしている人がいて通報したら、かけつけた家族に「余計なことをしてくれたね」と言われた事があります。
放置して通り過ぎるのも無理なので、間違ったことはしていないと思います。
虐待されている人を見たら、すぐ通報しないほうが良いケースもあるかもしれません。
どういう行動をするのが正しいのか、すぐに答えは出ないので、まずは知ることから始めてみようと思いました。
子ども虐待防止
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿